
ある夫婦の間に赤ちゃんが生まれた。夫婦は赤ちゃんの誕生を喜んだ。そして彼らは父方の実家で一緒に生活をしていた、なので、父親の両親。赤ちゃんからみたらおじいちゃんとおばあちゃんは赤ちゃんをかわいがって毎日世話をして積極的に話しかけた。
なので、最初に赤ちゃんが発した言葉は「おじいちゃん」だった赤ちゃんの祖父は歓喜した。両親よりも自分の事を呼んでくれるなんてかわいい孫だ!と赤ちゃんをほめてやった。
翌日、おじいちゃんは亡くなった。
おじいちゃんの突然の死から数週間。悲しみもさめやらぬうちに赤ちゃんが無垢な笑顔で「おばあちゃん」と祖母を呼んだ。祖母は祖父の死は悲しいけれど、この新しい命が元気に育ってくれたら本望だと思った。
翌日、おばあちゃんが亡くなった。
赤ちゃんの両親はこの不可解な現象に気がつき始めていた。そう。赤ちゃんが指名して、赤ちゃんから呼ばれた人はもれなく翌日に死んでしまうのだった。
しかし、こんな事は誰にも相談できるはずもない。しかも、我が子にそんな禍々しい力があるなどという事は信じたくなかったので、2人は祖母の葬儀のあとも赤ちゃんを大切に育てた。間もなくして赤ちゃんは新しい言葉を覚えた。「おかあさん」。
赤ちゃんの母親は翌日交通事故で亡くなった。
信号無視をしてきたトラックにはねられたのだが、トラックの運転手は信号は青だったとずっと言い張ったり、母親のすがたが突然あらわれたなどという意味不明な事を口走りついには警察の精神病院に送られてしまって事故の真相は明らかにならなかった。
しかし、父親が考えているのは自分の妻の死よりも自分に差し迫った危機であった。次に赤ちゃんが発する言葉は「おとうさん」だろう。この言葉はほぼ間違いなく赤ちゃんが覚えている言葉であり、父親は自分が死ぬタイミングを天にゆだねる事しかできなかった。
母親の死の3日後に赤ちゃんは「おとうさん」としゃべった。父親は赤ちゃんの笑顔をみて複雑な気持ちになったが、この現象は天から自分に課せられた何らかの罰だろうと思った。そう思うと気持ちは不思議と冷静になれた。自分の死を受け入れよう。そう思ってその日は赤ちゃんの寝顔を見ながら、眠りに落ちた。
翌日、隣の家の主人が亡くなった。
|