
島田秀平さんが語った怖い話をご紹介します。
ある仲の良い3人家族がいました。お父さんとお母さん、そして息子のしんちゃんです。
しばらくはしんちゃんが1人息子として育てられていましたが、ある日弟ができます。
「しんちゃんもこれからはお兄ちゃんになるんだよ」
お母さんからそう言われました。両親は今までしんちゃんにつきっきりでかわいがってくれていましたが、弟が家にきてからは弟の面倒ばかり見るようになりました。
しんちゃんはいつのまにか弟に嫉妬心を抱くようになっていました。弟がパパとママを奪ったんだ・・・。
皮肉なことに弟はしんちゃんによくなついていました。いつも「しんちゃん、あそぼー」としんちゃんのところに来ます。
家族でキャンプへ行った日のことでした。両親としんちゃんと弟の4人で河原でバーベキューをしたあといつものように両親は弟をちやほやしていました。
しんちゃんは面白くなくて、ひとりで河原の方へ行きました。すると後ろから「しんちゃんーーー!」と弟が走ってきました。
しんちゃんは無視しました。しかし次の瞬間「わぁーー!」と声がして、ふりかえると弟が川に流されています。
「しんちゃん!たすけて!・・・・しんちゃん!・・・しんちゃん・・・たすけて・・・」
両親を呼びに行こうとしましたが、しんちゃんの心に魔が差しました。(このまま弟がいなくなれば、また両親が僕をかわいがってくれる)
しんちゃんは助けを呼びに行くことはありませんでした。
数日後、弟の葬儀が終わり両親は悲しみに明け暮れましたが、また以前のようにしんちゃんをかわいがってくれるようになりました。
幸せな毎日でしたが、ある日、しんちゃんだけに声が聞こえるようになりました。「しんちゃん・・・」弟の声です。よく聞くと、
「しんちゃん・・・・まえ・・・」と聞こえます。弟は見殺しにされたことを恨んでる!しんちゃんはそう思いました。
一日に何度かその声がきこえるようになってからしんちゃんは小学生になっていました。両親は一人息子のためにケータイ電話を持たせてくれました。
ケータイを使い始めた日に留守番電話が1件入っていました。そこには「しんちゃん・・・・まえ・・・」あの弟の声です。留守番電話にまで意味の分からない言葉を入れてくるようになってしまったのでした。
しんちゃんは弟の声が聞こえるストレスですっかり寝不足になっていました。通学途中で、赤信号に気が付かずに渡ろうとしてしまったのです。その時、今までで一番大きな声で「しんちゃん・・・まえ・・・!!」という声が聞こえてはっと立ち止まると目の前を大型トラックが横切っていきました。
あのままぼーっと歩いていたら、死んでいた。弟は僕が助けなかったことを恨んで声を聞かせていたのではなくて、この日のために僕に気をつけるように注意をしてくれていたんだ!しんちゃんは大泣きしました。そして友達に今までのこと。弟を見殺しにしてしまったことから声が聞こえるようになったこと。留守番電話にも声がはいって、今日トラックから自分を守ってくれたこと。
すべてを話しました。友達は「そうなんだ、良かったね」と言ってくれ、ケータイの声を聞かせて。と言いました。しんちゃんがケータイを渡し音声を聞かせると友達は青白い顔になってしまいました。
これ、「しんじまえ!」って言ってるよ。
人間、ある言葉を1度間違って聞き取るとそれからは正されるまでずっと同じに聞こえてしまうことがありますが、しんちゃんは「しんじまえ」を「しんちゃん、まえ」と聞き間違っていたのですね。弟はやはりしんちゃんを恨んでいたようです。