
大阪の梅田にあるZというバー。
このバーには不思議な都市伝説が語り継がれている。
知る人ぞ知る、隠れた名店で有名人が来店することもしばしばあるらしい。これはとある俳優が来た時の話だ。
カウンターに座った俳優はウィスキーを注文して誰かとずっと話している。しかしカウンターには誰もいない。俳優業をしている人だからきっとセリフを覚える練習をしているのだろう。と周りの人は思ったという。
マスターも特に気にかけなかったが、そのお客さんは2時間ずっとしゃべりっぱなしだったのだ。
お会計の時にマスターは俳優さんにお店はどうでしたか?と質問した。すると、
「いやー、カウンターにいるコックさんおもしろい人だね!ここで20年も働いてるとか!楽しくお話できて気づいたらこんな時間になってました」。
このバーにはマスター以外店員はいない。前のマスターはトラブルに巻き込まれてすでにこの世の人ではないのだ。
マスターは俳優に返す言葉もなかった。
この俳優以外のお客さんでも”コックさん”を見てしまった人が何人かいるそうだ。みんな口を合わせたかのように同じ人物の特徴を話す。