
これは知人から聞いた話だ。
うちの亡くなったおばあちゃんからよく聞かされた話。何度も話すんで自分もすっかり覚えてしまった。
おばあちゃんの妹は群馬県のとあるところのお寺に嫁いだ。そのお寺に泊まりで遊びに行った時の話。
昼間はいとこなども呼んでわいわい食事を楽しんだそうだ。そして夜は本堂に布団を敷いて寝たらしい。
真夜中にふと目を覚ますと、布団の横に人間とは思えない大きな黒い人が立っていたという。部屋の中は月の薄明かりで見ることができるのにその人影だけは真っ黒で顔もまったくわからなかったという。
おばあちゃんは布団の中で震えて朝を迎えたという。妹に朝食のときにその話をした。妹は、
「ああ、その人はきっと今朝亡くなった方だね、さっき連絡が入ったよ。お寺には死ぬ人があいさつに来ることがあるんだよ」。
とさもあたりまえかのように答えたという。