
大量の鉄を溶かして、鉄製品に加工する製鉄所。
真っ赤になってドロドロに溶けた鉄は何千度もあるという。数年に1回くらいのペースで製鉄所では重大な事故が起こるという。
”重大な事故”とはつまり、人が鉄を溶かす設備に落下して死亡してしまう事故である。
ベテランのある製鉄工場の主任は語った。
「鉄を加工する時に、鉄が言うことを聞かずに、のけぞっちゃったりする時があるんだけど、そういう時は気がつくんだよな。誰か落ちたなって。従業員をチェックすると誰かいなくなっていて、そいつが”落ちたんだ”ってわかるんだ。」
製鉄工場は一歩間違えれば、死に直結する危険な職場なのである。
「でもね、不思議なことに同じように鉄がどうしても言うことを聞かない日があって、点呼を取るけど落ちたやつなんて誰もいないことがある。そういう日はね工場長が自腹で飲みに連れて行ってくれたりするんだ。」
製鉄工場は人知れず、死体処理の現場としても使われる危険な職場なのである。