
出張に行った時の話。地方のある場所なんだけど、そこに行く時にはうちの会社で宿泊するビジネスホテルは決まっていた。同僚と一緒にチェックインすると同僚が言った。
「なあ、知ってる?このビジネスホテルなんだけど〇〇課の人が泊まった時・・・」
「あーーー!それ以上話すなー!」
俺は怪談の類が大っ嫌いな性格だ。その時も同僚が話そうとする内容が怖い話なんだろうという想像がついたので話を遮った。
でも、そういう記憶って、なぜだかわからんが夜にひとりで部屋にいる時に限って思い出しちゃうんだよな・・・。俺は「さあ寝よう」とベッドに入った瞬間、同僚の話の続きがなんだったのか?と考えてしまった。
(もしかして、このホテル、出るのかなあ)
そう思った瞬間、部屋をノックする音が聞こえた。
ドンドンドンドン
俺は自分の心臓がなんで止まらなかったのか不思議なくらいに驚いた。
ドンドンドンドン
ノックは続く。少し冷静に考えて、同僚か?それともホテルの人?それとも・・・?
俺は勇気を振り絞ってドアの前まで行き、大声を出した「どうしたんですかー!?」
ノックの音はピタッと止んだ。(なんで?? もしかして酔っぱらいとかだったのかな?)
安堵しかけた瞬間。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
さっきより激しくドアを叩く音がする。しかも今度は、
ガチャガチャガチャ
とドアノブを開けようとする音まで聞こえる。
マズイ!!そう思ったが、どうすることもできず、俺はベッドでそのまま耐えるしかなった。しばらくして音は消え、俺は恐怖に怯えながら朝を迎えた。
次の日の仕事は朝早くだったので、すぐにホテルをチェックアウトして同僚と出て行った。青ざめた俺の顔に気づいた同僚が、
「どしたの?眠れなかった?」と聞いた。俺は聞いた。
「昨日、話そうとした話なんだけどさ、なんかあったのあのホテル?」
「ああ、昔、あのホテルで火事があって、逃げ遅れて死んだ人の霊が出るって噂でさ」
「その幽霊。ドア叩くんだろ?」
「なんで知ってるの?もしかして・・・出た?」
「出ちゃったんだよ・・・。やっぱりそうだったのか。良かった部屋のドア開けなくて」
「なんで?その幽霊部屋から外に出たくてノックしてたんだろ?」