ある夫婦の間に待望の赤ちゃんが生まれた。
赤ちゃんはお母さんに似ていて、夫婦の両親も大喜びだった。生後数ヶ月して、赤ちゃんは初めて言葉を発した。
「おじいちゃん」
赤ちゃんが最初に口にする言葉としてはちょっと変わっていたが夫婦は大喜びだった。
翌日おじいちゃんが亡くなった。
葬儀が一段落し、遺品の整理をしていた時の事である。赤ちゃんがまた新しい言葉を覚えたようだ。
「おばあちゃん」
おばあちゃんは翌日亡くなった。夫婦はいやな予感を感じていたが、周りの人はおじいちゃんを亡くしたショックでおばあちゃんは亡くなったんだと夫婦を慰めた。
数週間が経ち、普通の生活に戻ろうかというところで赤ちゃんは
「お母さん」と言った。
翌日、お母さんは交通事故に遭い帰らぬ人となった。お父さんは自分の妻を亡くしたショックよりも赤ちゃんの死の宣告が核心に変わった事がショックだった。
次に口にするのは間違いなく自分の事である。お父さんはどうしていいのかわからなくなった。
そしてついにその日は訪れた。
「お父さん」
赤ちゃんが発した一言でお父さんは死を覚悟した。
翌日、となりの家に住むご主人が亡くなった。