
隙間女とは日常に潜むちょっとした不安を都市伝説化した話である。今日は隙間女にまつわる話を2話紹介しよう。
台所の隙間女
私の家の台所には、冷蔵庫とキッチンの間に10センチほどの隙間がある。
夏の暑い日、一人でテレビを見ていた。時間は午前1時を回っていたと思う。急にのどの乾きを覚え、薄暗い台所にとぼとぼ歩いて行った。リビングから漏れるあかりでなんとなくキッチンは電気をつけなくても大丈夫なくらいの明るさを保っていた。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、冷蔵庫のドアを締めた時、私は見てしまった。
冷蔵庫のと壁の10センチほどの隙間に女がいるのを・・・・・。
「わぁっ!!」叫んだ瞬間、隙間にいた女は消えていた。それから深夜にキッチンへ行く事は避けるようになった。あの女は一体何者だったのだろうか。
格安物件の押し入れに隠れる隙間女
就職をきっかけに東京都内のアパートで一人暮らしを始めた。アパートは格安物件というやつで、周辺の相場よりも30%近く値段が安かった。不動産屋に通い詰め、交渉した結果。
「この物件ならなんとか」と出してもらった物件だった。
安い割には築浅で、収納がたくさんある事が気に入り即決してさらに礼金なしにしてもらった。とてもラッキーだったとその時は思っていた。
住み心地は良かった。部屋はきれいで自分の前に人が住んでいたなんて思えないほどだった。近くにはコンビニもスーパーもある。新生活には持ってこいという感じだった。就職までの間は家でテレビを見たり、ゲームをしたりと自堕落な生活を送っていた。
1週間くらい経ち、会社での仕事が始まり、日中は家をあける日が多くなった。
すると不思議な事が起こるようになったのである。深夜部屋に戻ると、本棚に置いてあった本がテーブルに置いてあったり、洗濯物かごに入れてあった洗濯物がソファーに出ていたり・・・。
最初は自分の記憶違いかとも思ったが、たて続けに起こったのでこれはなにかあるとわかった。
さらに不思議なのは部屋の物が無くなった形跡は一切ないのである。泥棒であれば、何らかを盗んで行くはずであるがその形跡がないとすると一体誰が、そんな事をしているのか。いよいよわからなくなった。
思い切って、秋葉原で防犯カメラを買う事にした。防犯カメラで自分の部屋を撮影するのは気が引けたが、そうするほか真相を知るすべはない。防犯カメラは部屋の四隅に設置して部屋全体が監視できる状態にした。
防犯カメラを設置して数日後、いつものように異変は起きた。
カメラをみると撮影中になっているので、映像データをチェックしてみた。
私が会社へと出て行く、数時間部屋の様子は何の変化もない。早送りすると、太陽の角度が変わってくのが、影の動きでよくわかる。地球は回っているんだななんて思っていると、部屋の押し入れに変化が。
少しずつではあるが、部屋の押し入れがあいていく、すこしずつ、すこしずつ、押し入れのふすまが空いて行くのである。映像を見ながら持っていたビールを落として画面に釘付けになってしまった。
さらに早送りすると20センチほどあいたふすまの隙間に女の姿が見えた。女はするりとその隙間から部屋へ出ると、おもむろにベットにあった枕をソファーの方に放り投げ、カメラを見てにやっとした。
自分のちょうど背後にある押し入れを振り向く事はできず。私は逃げるようにその物件から出た。