交換日記

交換日記

これは俺が専門学生だった時の話だ。

その頃、交換日記というのが流行っていた。友達と日記を書いて交換して読み合うというやつだ。
女の子がするコミュニケーションのイメージだけれど俺はなぜかそのとき交換日記というものが
してみたくなってしまって、専門学校で同じクラスだった女の子と交換日記をすることにした。

まあ、実はその彼女のことが気になっていたというのが本当の理由なんだが。

毎日学校にいる間に日記を書いて、相手に渡す。
読んだら相手に返す。
そういうのを毎日続けた。俺は彼女とコミュニケーションが取れることが嬉しく、
彼女もそこそこ楽しんでいるようだった。

やがて俺たちは付き合うようになった。

楽しい日々が続きたのだが、俺はその時彼女のすべてを理解していなかった
彼女が突然学校へ来なくなってしまった。いつもは交換日記をお互い学校へ置いて置くのだが、
その日は「いままでの交換日記を読み返したいから持って帰っていい?」と言って俺の日記を
彼女は自分の家に持ち帰っていた。

彼女が学校へ来なくなって1週間が過ぎたころ俺は警察署にいた。彼女が自殺したのだ。
山の中で一人で死んでいた彼女の手には大量の睡眠薬が握られていた。かばんの中には

俺の交換日記が入っていたので俺は警察で事情聴取を受けていた。

彼女はもともと病弱でよく入退院を繰り返していた。そのことが周囲が思う以上に
彼女にとっては苦しく、いっそ自分で人生を終わりにしようという結果に至ったようだ。

彼女の葬儀のときに俺は彼女の両親に交換日記のことを話、俺が預かっていた彼女の日記を
彼女の両親に渡した。少し迷ったが彼女の生きた証を両親に持っていてもらいたいと思った。

やがて月日は流れ、俺にも新しい恋人ができた。
付き合っている期間が長くなるにつれお互い結婚も意識するようになってきて、
同棲しようという話になった。引越の日自分の荷物を整理していると見覚えのある日記が出てきた
亡くなった彼女の交換日記だった。彼女の両親に渡したはずなのに、、、
彼女の両親に連絡すると「実は、日記は受け取ったその日にいつの間にか無くなっていた」
と言われた。俺が無意識のうちに持って帰ってきてしまったのだろうか?

久しぶりにみた日記に懐かしさを覚え、俺は日記を読み返した。専門学校の時の
思い出、彼女とすごした楽しい日々が脳裏に蘇ってくる。しかし、おかしいことに気がつく。

彼女が亡くなったあとも、日記は書かれているのである。

しかも、俺と一緒にいるように今の恋人と出会って、デートしたり食事をしたりする様子が
克明に記録されているではないか。

俺は結局、恋人と同棲するのをやめ、別れを告げた。それからは新しい恋人は作っていない。
新しい恋人を作ると彼女がまた日記を書いてしまうような気がするからだ。

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